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デジタル版画で北斎を刷ろう!ワークショップを開催しました。

7月 06日 デジタル版画で北斎を刷ろう!ワークショップを開催しました。

7月4日(土)に、「もの作りの力で葛飾北斎の神奈川沖浪裏を再現する」ワークショップを開催しました。

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≪浮世絵は世界初のカラー印刷物?≫

浮世絵は印刷技術で言うと、凸版印刷の多色刷りという手法に分類されます。葛飾北斎を代表とする浮世絵作品は、印刷物を大量に流通させることができたからこそ、ヨーロッパの絵画や音楽に影響を与えることに繋がった。とも考えることもできます。浮世絵がメーカーによる製品であると考えるのであれば、最新の技術で再現しても良いのではないか。そう考え、co-lab墨田亀沢の事業主である株式会社サンコー(印刷業)株式会社浜野製作所(金属加工業)の2社の町工場がコラボレーションして、この取り組みが開始されました。

当日は15名の方が参加され、さらにマスコミの方、来年度オープン予定のすみだ北斎美術館関係者の方々など多数参加されました。まずはバスで墨田区八広にある浜野製作所が運営する「町工場から世界を繋ぐ モノ作りの情報発信基地」がコンセプトのGarageSumidaに移動し、彫りの加工のデモンストレーションです。

≪彫りの工程≫

従来の浮世絵は、絵師が絵を描き、それを彫り師が色ごとの版に彫刻し、刷り師が刷っていました。印刷技術・金属加工技術を活用した「デジタル版画」では、出来上がった版画から、印刷で使われる色分解と呼ばれる技術を使い、色ごとのデータを起こします。そのデータを基に、レーザー加工機を使って版を彫刻し、刷り工程は従来通りの絵具とバレンを使って行います。

まずはレーザー加工機で加工するまでの流れを、美術系大学で日本画を学んでいた清水さんからご説明。今年の4月に入社の新人さんなのに、まるでアナウンサーのように堂々とした説明です。

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実際にレーザー加工機を使って木材に彫刻を実施していきます。今回は、MDFと呼ばれる集成材に浪裏の線画部分を彫刻していきます。

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初めて見るレーザー加工機に、皆さん興味津々です。

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たった8分ほどで、名刺サイズの版木が出来上がり、参加された皆さんからは、その精度の高さ、加工の早さに歓声があがりました。

その後、バスでco-lab墨田亀沢に移動します。移動中には、墨田区の保有する浮世絵の調査・研究をしている墨田文化振興財団の学芸員である山際さんより、浮世絵に関するレクチャーがありました。例えば、職人さんが彫る浮世絵は、彫りの工程だけでも複数の職人さんが関わって40日程度掛かること。浪裏の富士山の左側にある波は、富士山の形を模していると考えられている事。などこれから刷りを体験するにあたって、神奈川沖浪裏という作品に対する興味がさらにわいてくるようなお話しでした。

≪刷りの工程≫

co-lab墨田亀沢に到着して、いよいよ刷りの体験です。サンコーの代表取締役刷師から、皆さんに刷りの指導をさせて頂きました。この企画が持ち上がってから約半年、版画の研修に行ったり、美術大学の版画の先生に技術指導を頂いたりしながら、版画の腕を磨いてきました。

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実際に、版の刷りの開始です。5枚の版を使い、6色の色を重ねて行きます。筆を使って絵具を版木につけた後に、濡らした和紙を乗せ、バレンで刷っていきます。紙を濡らすのは、絵具のつきを良くするためと、乾いていると紙がボロボロになってしまうことを防ぐためです。本物は8色で出来上がっているのですが、富士山の周りの空の部分のグラデーションは、刷りの技術がとても難しいので今回は省略です。

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版の数が少なく、5版を刷り終えるまでにだいぶお待たせしてしまったのは、反省点です。

刷り終わった方から、台紙に活版印刷機を使って、絵のタイトルや日付を刷って貰います。同じ凸版印刷と言う技術が、日本では浮世絵として発展し、海外では活版印刷機として発展した。というのも、お国柄が出ていてとても興味深い話だと思います。

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≪完成≫

刷上りった浮世絵を台紙に固定して完成。皆さん素敵な笑顔です。

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皆さんの作品が揃ったところで、記念撮影。墨田区内では圧倒的な人気と知名度を誇るストロングポーズの社長さんが約1名。

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最後は、北斎通り沿いにある、すみだ北斎美術館の建築現場をバスの中から視察して、解散しました。

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デジタル技術を使ったことによって、簡単に版木が作れたからこそ、多くに人に刷りを体験してもらうことができました。そして、その版を使って実際に刷ってみると、版画が大変な職人技のうえに成り立っている繊細な作品であり、製品であることがわかります。

このワークショップは墨田区の後援、墨田文化振興財団の協力、そして様々な方のサポートのもと実施することができました。関係者の方のご尽力にこの場を借りた感謝申し上げます。

葛飾北斎はクリエイティビティある芸術家という側面と、工業製品である浮世絵の1工程をになっていた職人という側面。その両方を持っていた人だからこそ、世界に知られるだけの功績を残せたのではないかと私は思っています。そして、クリエイター専用のシェアオフィスであるco-labが、もの作りの町である墨田にできた意味は、クリエイティブと職人技。この2つが出会い、化学反応が生まれることにあります。co-lab亀沢としては、もの作りとクリエイティブを自らの中で化学反応させて、絵画の世界にイノベーションを起こした葛飾北斎に関する取り組みを、今後も継続していきます。

今回残念ながら参加出来なかった方も、次回は是非ご参加ください。浮世絵に対する見方が変わりますよ。

 

co-lab墨田亀沢 チーフ・コミュニティ・ファシリテーター 有薗