Who’s working? 第12回 nice bravo design 佐藤誉子さん
co-lab墨田亀沢には様々な活動をされているメンバーさんがいらっしゃいます。
その活動をインタビュー形式でご紹介するシリーズ“Who’s working?”
第12回目は『株式会社nice bravo design』の佐藤誉子さんです。
今回は佐藤さんに現在のお仕事やco-lab墨田亀沢に入ったきっかけなどについて伺いました。
北欧家具と相性が良い国
――現在のお仕事はなんでしょうか?
オリジナルブランド「FLYING APARTMENT」の運営と他社の商品開発、それに伴うブランディングやストーリーの考案などもやってます。
――創業のきっかけを教えてください。
広告代理店から北欧の家具ブランドに転職したあと、商品開発部長として仕事をしていました。その会社がある商社に買収されることになったのですが、創業者がつくったブランドと商社が買い取ったブランドでは熱量が大分違ってしまったんです。そのギャップにがっかりしてしまい、今までのノウハウを使って独立したほうがいいなと思いました。
――実際に働いて気づいた北欧家具のよさとはなんでしょうか?
北欧は1年の半分が極寒で、家で過ごす時間が長いんです。かといって家はそんな広くない。だから家で快適に長く過ごすことに重きを置いてデザインされていて、ミニマムで無駄な要素をそぎ落とされたつくりになっています。木でも鉄でも素材の質も高いですし、暮らしが楽しめるような遊び心が入っているのもポイントですね。
あと、日本の住環境と共通性があると思っています。北欧のミニマムなスタイルが日本のコンパクトな家とサイズ感も合うんです。
LOFT最上階でアートを売る
――リニューアルしたHPの他に、「FLYNG ART APARTMENT」のHPがありますね。アート作品を販売するきっかけや選考基準についてお聞きしたいです。
先ほど話した商社にいたとき、LOFTの商品開発もしていました。その仕事ぶりをLOFTの社長が見ていてくれて「25年ぶりに渋谷LOFTがリニューアルする際に最上階で企画をやらないか」と声をかけてくれました。そのときFLYNG ART APARTMENTを立ち上げたんです。ですから、FLYNG ART APARTMENTがFLYNG APARTMENTというブランドの先駆けなんです。
企画は個々の部屋の中にアーティストの作品を入居させ、売れたら入れ替わるという内容で、「アパートメント」という名称はそこに由来しています。コンセプトは4つです。「無駄をそぎ落したデザイン性の高い作品」「伝統工芸の技を使った若手の作家の作品」「劇的に装飾的なこと」「ふふっと笑える要素のある作品」。その4つを満たした作品を基準に私とLOFTの社長で選考し、日本に限らず海外にも積極的に声をかけていきました。
反響も大きく、企画を始めた翌年のお正月の「日経MJ」の表紙にどーんと紹介されました。アーティストの作品を取り扱うということで注目も浴びたし、面白がってもらいました。
――そういう由来があったんですね。続いてco-lab墨田亀沢に来てから開発されたという革のバブーシュについてもお聞きしたいです。
前から革のバブーシュはやりたかったんです。けれど、2014年から出していたFLYING APARTMENTのバブーシュは洗えることが評判だったため、革製品だとそれができず製品化は難しかったんです。
そんな中、co-lab墨田亀沢に引っ越したあと、墨田の冊子で洗える革が紹介されていたのを見つけ「洗える革がある!」と飛びついたんです。すぐにメーカーさんにつないでもらって、次の日には商談に行ったと思います。
豚革の素材としての魅力は毛穴が3本あって通気性がいい。それに革を得るために豚を処分せず、食べた豚の残りの皮を使っているという点もサステナブルです。
すごくいいものができたので、2017年のNY NOWにも出展しました。結果、豚革のバブーシュは北米限定で17か所以上のショップやスパ、ホテルに置かれることになりました。今後日本での展開も考えています。
ヘルプミー歓迎!
――co-lab墨田亀沢に入ったきっかけは?
最初はco-lab千駄ヶ谷(現在は閉鎖)にいたんですが、ビルを立て壊すという噂もあり、食に興味があるのでキッチンのあるシェアオフィスに引っ越しました。ただ、そこはあまり入居者のことを考えず場所を貸すだけの施設だったので、色々な相談に乗ってくれたりクリエイターのことを考えたりして動いてくれるco-labがよかったなと思うようになりました。戻ろうと思ったときに墨田ができるという話を聞いて、見学に行ったのがきっかけです。
――入ってみてよかった点は何ですか?
下町人情があって、見守ってくれる温かさがあります。設計もいいです。奥にブースがあるので、必ずオープンスペースを通ります。そうするとメンバーと顔を合わせる機会ができて、リビングを通って部屋に帰るようなアットホーム感があります。
――あ、言われてみるとそうですね。全然その良さに気づいてなかったです(笑)。普段どういう使い方していますか?
日中仕事をするだけでなく、夜中仕事したいときや、会社が休みの時にも立ち寄れます。あと、人といっしょに作業するときはオープンスペースで作業しています。
ここでものづくりしてるとき「どうしたらいいかな~」と言うと、誰かが反応してくれたり人につなげたりしてくれます。ヘルプミーと言ったら、なにかしらみんなが投げかけてくれるというのが他にはない価値だと思います。
西から東、提案の先
――かつて東京の西側のco-labにいた佐藤さんから見て、東側はどのように見えていますか?
デザインというと渋谷、青山、代官山とか東京の西が中心ですし、会社対会社のやりとりでもまだまだ西のほうが強いです。ただ最近は西のビルの1室で仕事をするより、東は何か面白いことができる下町パワーがあるぞという良いイメージが広がっていると思います。また、ものづくりの町なので商品開発には向いており、行政もそういうことに力を入れだしてることは知れ渡ってきてると思います。私はことあるごとに、ここはとてもNYブルックリンに似ている!と言い伝えています(笑)。
――最後に。仕事で大事にしていることは何ですか?
クライアントが何を伝えたいかをちゃんと洞察して読みとることです。相手が本当は何が困っていて実は何がしたいか聞き出すために、投げかけたりもします。そうやってクライアントの依頼内容の奥の意味を読み込んで、「提案の先の提案」ができるように心がけています。
インタビューから察するに、デザイン会社に属している人が「打ち合わせは錦糸町で」と言われたら、少し訝しむと思います。それくらい錦糸町という街の旧来的なイメージは強く残っているでしょう。しかし、東京の東という少しマクロな視点に立つと、スクラップ&ビルドを繰り返す西側より古くからある街並みを重んじ、スタートアップにも適した物件があり、IT企業の密集地域にはない製造業の多彩さもあります。「西疲れ」している方はぜひ一度co-lab墨田亀沢に来てほしいです。
また、最近リニューアルしたFLYING APARTMENTのHPはこちらです。佐藤さんのこだわりが随所に感じられるアイテムが多数紹介されているので、ぜひご覧になってください。
次回は深川信彦さんにお話を伺います。お楽しみに!