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co-lab墨田亀沢の毎日

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Who’s working? 第11回 はなだフォトワークス すみだ 花田友歌さん

co-lab墨田亀沢には様々な活動をされているメンバーさんがいらっしゃいます。
その活動をインタビュー形式でご紹介するシリーズ“Who’s working?”
第11回目は『はなだフォトワークス すみだ』の花田友歌さんです。
今回は花田さんに現在のお仕事やco-lab墨田亀沢に入ったきっかけなどについて伺いました。


「会社員兼写真家」になった理由

――現在のお仕事は何でしょうか?
会社員をしながら兼業で写真家として活動しています。スタジオを持たず墨田区を中心に出張撮影をしていまして、主に家族写真とビジネス写真を手がけています。
――写真家になったきっかけを伺いたいです。
もともと写真は趣味でやっていたんですが、子どもが生まれて「自分の子どもがこんなにかわいいんだ」ということに圧倒されました(笑)。そのかわいさを何とか写真におさめたいという目的ができたのがきっかけです。

あと、会社員としてのキャリアが出産後の復職でつまずいてしまいました。このままモヤモヤしながら仕事をしつづけるのかと思ったとき「写真なら会社を辞めずにもう1つの道をつくれるかも」と思ったのもきっかけの1つです。
――主に墨田区で出張撮影すると伺いましたが、墨田区ってその、良いですか?
ものすごくいいですよ!
――どの辺が?
地域のコミュニティが活きてますね。町内会や起業家や経営者のつながりが強くて、昔からのコミュニティが脈々と続いてるんですけど排他的ではないんです。世代交代もしていて、開かれている地区だと思います。撮影場所でいうと、古い物と新しいものが混じりあって、その塩梅がちょうどいいと思います。古い建物もあれば、リノベーションしているものもあるし、新しいものもどーんとありますし。

花田さんが出張撮影でよく利用する隅田公園

子育てにポジティブになれるニューボーンフォト

――年々スマホで撮影が簡単になる時代です。そんな中、家族写真を写真家に頼む意義は何だと思いますか?
まず、家族写真を家族だけで撮ろうとすると、誰かが撮影者に回るかセルフタイマーや自撮りしかないですよね。もし、家族のいろんな側面や表情を残したいと思ったら、撮ることに専念してくれる人が必要だと思うんです。
あと、わたしは地元密着で活動しているので、地元のロケーションに精通しているという強みがあります。どこを背景にするか、どういう立ち位置で、どれくらいの距離かで撮影するかによって写真は変わってきます。わたしは身近なロケーションについてそうした情報を把握しアップデートし続けているので、「このポイントでこの時間ならこういう写真が撮れる」というマニュアルが頭の中にストックされているんです。それはその場所に初めて来る人(プロカメラマンも含めて)よりも大きなアドバンテージだと思っています。
――なるほど。花田さんのサイトを拝見すると、ニューボーンフォトというページがあります。この撮影スタイルについて教えてもらいたいです。
ニューボーンフォトとは生後2~3週間の赤ちゃんを撮る写真のことです。赤ちゃんを繭のようにくるくると包んで撮影するのが代表的なスタイルで、新生児期にしか撮れない姿をおさめます。

その際、わたしは助産師さんに同行してもらっています。そのいちばんの理由は、赤ちゃんの安全を確保したいからです。新生児期は母子ともに心身が安定してない時期。お母さんは赤ちゃんを人の手に託すことに不安がつきまといます。そこでプロの助産師さんがいれば安心感を提供できると思いました。あと、助産師が撮影もアシストしてくれることで自分自身も安心して撮影にのぞめるんです。
――利用者の方からはどういう声を聞きますか?
やはり安心感があると言ってくれていますし、話し相手になってくれて良かったという声も聞きます。1か月検診を終える前の家からなかなか出られないお母さんって、喋り相手が全然いないんですよ。パートナーがいれば多少は喋れるかもしれないけど、それでも昼間はお母さんと赤ちゃんだけになりがちです。それまで仕事など社会的な活動があった方が孤立してしまうことで、産後うつを発症しやすい期間でもあります。そこで外部の人が来て、写真撮影だけでなく出産のときに大変だった話や子育てのお悩みを話せることで心が晴れるという声が多いです。撮影そのものの体験と、出来た写真をセットで大事にすることで、子育てに対してポジティブになっていただきたいと思っています。

co-lab墨田亀沢をアトリエにする

――co-lab墨田亀沢のどこに興味をひかれて入会されましたか?
単なるシェアオフィスじゃなく、co-labの中でコラボレーションもあるのが良いと思いました。あと、写真は印刷と関係が深いので、下の階にある印刷会社のサンコーさんにのちのちお願いしたいことが出てくると考えたんです。
――入ってみて良かった点はなんでしょうか?
co-labに入る前は家で作業をしていたのですが、昔から家では勉強もはかどらないタイプなので仕事場として重宝しています。行くと気持ちがあがる場所ですね。
あと、仕事の合間にほかのメンバーの方と交流もできますし、プレゼン会もあります。同じ地域でクリエイティブな活動している方から刺激をもらっていますね。
――最近フリースペースからデスク席に移動されましたが、その理由はなんですか?
入会してから半年経って、カッコよく言うとco-labを自分にとってのアトリエにしたいと思いました。デスクに移ってから色を正確に映すキャリブレーションモニターを導入しましたし、ゆくゆくは写真専用のプリンターも入れて全部の作業をできるようにしたいと思ってます。

シャッターを切ることは祝福と想像

――錦糸町や周辺地域で好きなお店はありますか?
UNLIMITED COFFEE BARにはよく行きます。ランチもコーヒーもおいしいし、夜はバーとしても営業しているんです。
――仕事で大事にしていることはなんですか?
家族写真はご家族の記念に撮ることが多いです。その大事な日に立ちあわせていただくことに感謝をしています。私もお祝いをする気で行きますし、撮らせていただく方の未来を想像しながら撮影しています。
――最後に。これからしたいことはなんですか?
作家的活動にも力を入れていきたいです。今、京都芸術大学の通信課程で写真を学び直しているんですけど、ご依頼いただいて撮るものとアプローチが違って面白味を感じています。現在、卒業制作を進めているのですが、京都での展示が終わったら東京でも――なるべく墨田区近辺で――展示会をしたいです。


ニューボーンフォトのお話を伺いながら、映画化もされた『82年生まれ、キム・ジヨン』のことを思い出しました。キム・ジヨンも結婚を機に仕事を辞め、一見理解ある夫(映画版)と義母の抑圧に苦しみながら幼い子と1人で過ごすうちに特殊な病に罹患してしまいます。その作品で描かれた病のみならず産後うつを理解するためには、母子が育児で孤立状態に陥るだけでなく、社会に出ていた女性が家に閉じこもることになるという振り幅を想像しなくてはいけないなと思いました。花田さんのように出産を経験した女性たちと撮影を機に心の内をシェアすることは、その寄る辺なさを和らげる社会的に意義のある営みでもあると思います。
次回は「株式会社nice bravo design」の佐藤誉子さんにお話を伺います。お楽しみに!

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