「すみだのみんな」でつくる~北十間川そよ風プレスができるまで~
『北十間川そよ風プレス』は隅田公園や北十間川のエリアの情報発信をするために、墨田区と東武鉄道が協定を結んで一緒につくっているフリーペーパーです。墨田区の各施設や東武鉄道の浅草駅やとうきょうスカイツリー駅など一部の駅で配布されています。
実は『そよ風プレス』、co-lab墨田亀沢にいるメンバーとco-lab墨田亀沢の運営母体である印刷会社サンコーが制作に携わっているんです。
今回は『そよ風プレス』をどのように制作しているのかを編集・ライターの草野明日香さん、デザイナーの青木佳代さん、サンコー営業課の山中慶一さんにお聞きしました。
官民一体の編集会議
――まず、今回のように役所と企業が費用を出し合ってフリーペーパーを制作するケースは多いのでしょうか?
(草野、以下「草」)官民が費用を出し合ってつくるのは、わたし自身はじめての経験ですね。
――編集会議には誰が参加しているんですか?
(山中、以下「山」):東武鉄道さんからは企画・開発部門の方々、墨田区役所さんからは観光課の方々、草野さんとサンコー代表の有薗とわたしが参加しています。会議はco-lab墨田亀沢で開いています。
――関係者勢ぞろいですね(笑)。区役所の方と東武の方はどういった想いから編集会議に参加していると思いますか?
(草):区役所さんも東武さんも地元の方を支援したいという想いを込めて制作をしています。また、両者が一緒に街のためにフリーペーパーを作る機会はなかなかないと思うので、行政と民間のコミュニケーションになっていると思います。
――みなさん地域への想いが強いんですね。想像するに、関係者の方も会議に参加することで企画に対する納得度も高まるのではと思います。
(草):そうですね。納品の際は山中さんが各所に持っていくんですけど、取材先には東武さんから連絡したり、区役所さんとつながっている所には直接完成品を渡したりしてるので、自分たちがつくった『そよ風プレス』をコミュニケーションツールにしてくれているんだと思います。
「やってみたい」を「やってみた」になる企画
――表紙に書かれている【「やってみたい」を「やってみた」に。】というキャッチコピーはどういう狙いでつくったんですか?
(草):『そよ風プレス』は隅田公園や北十間川の川沿いに来たくなるように、もっと楽しむ場所として使っていただけるように「地元の方たちが情報発信する」という想いでつくっています。今ふつふつと何かやってみたいと思ってる人にきっかけを提供できればと思ってコピーを考えました。
――なるほど。企画はどうやって考えるんですか? 隅田公園や北十間川限定の企画だと結構限られる気がするんですけど……。
(草):事前に山中さんと有薗さんと私で今回のテーマなどのベースをつくり、会議では区役所さんや東武さんが入れたい企画とすり合わせていきます。
(山):会議で墨田区の現状とか「東武は今こんなことやってて」という話題を2時間くらい話し込むと、何かしらアイディアが出てきますね。
――最終的に企画はどうやって決定してるんですか?
(山):話し合いのうえ、満場一致で決めます。多数決だと好みに左右されてしまうので。あと、企画が【「やってみたい」を「やってみた」に。】と合致しているかどうかも重要な判断基準です。
区役所とのコラボレーション
――会議で役所の方と話してみて、どういった感想をもちましたか?
(草):立場上いろいろなところに配慮する必要があるので、どうしても抽象的な言い方が多い印象をもちました。なので、会議では私たちが具体的に聞き出すようにしています。
――会議を重ねてみて、発見はありましたか?
(山):墨田区役所の観光課の方は良い意味で役所感があまりないですね。フレンドリーで区民に対して何をしたらいいんだろうというのを大事に考えているので、本音を聞き出しやすいです。
(草):区役所さんは公正性を大切にしているので、地元の団体や一市民に対して伝えたいことがあるけど、どうやったら伝えられるだろうということに悩んでいることがわかりました。
クリエイターの制作工程
――ここからは実制作の話を伺いたいです。まず何から始めるんですか?
(青木、以下「青」):(草野)明日香ちゃんと山中さんと3人で会議します。明日香ちゃんがつくってくれるラフ(構成)を見ながら、文字数のこととか、写真が何点だとか、その辺のすり合わせをします。
――青木さんはあがってきた企画に対してダメ出しとかするんですか?
(青):そこは無でやってます(笑)。
(草):ダメ出しではないですが、表紙のロゴをつくってくれたのは青木さんなんです。
(山):青木さんがラフの段階で「ここは写真じゃなくてイラストのほうがいいんじゃない」と提案してくれることもありました。このプレスの趣旨を理解して、お願いしてる以上のことをしてくれています。
――取材とライティングはすべて草野さんがしているんですか? おすすめの飲食店なども掲載されてますけど。
(草):はい。区役所さんや商店街から飲食店などの資料をもらいつつ、結局すべてを行っています(笑)。
――すごい。サンコーはどういった役割を担ってるんですか?
(山):基本は進行管理や編集会議のとりまとめ、印刷・製本ですね。草野さんと青木さんの制作の過程においては編集業務でお手伝いしています。
――『そよ風プレス』には写真も多く掲載されてますけど、写真は誰が撮ってるんですか?
(草):一部は有薗さんが撮影するんですけど、地域のみなさんや取材先さんからご協力いただいて、良い写真を提供してもらっています。
co-lab墨田亀沢は地域のHUB
――『そよ風プレス』をつくってから、地域とのつながりを実感することはありますか?
(草):取材先さんからいろんな意見を言われることが増えたとは思います。あと、「実はこの辺こういう動きがあって……」というふうに以前より親密に話してもらえるようになりました。
(山):地元なんだけれども特集することで行けてないところがあることに気づいたし、行ってみようと思えるようになりましたね。
――では最後に。今回の制作拠点であるco-lab墨田亀沢とはどんな場所だと思いますか?
(青):ここを作るのに墨田区の助成金を受けているので(註:「新ものづくり創出拠点」の1つとして墨田区の支援を受けて開設)、区役所の方はよく来ますし、サンコーさんも区役所さんの印刷物を手掛けていて距離は近いのかなと。あと、イベントの運営をしている団体などが入れ替わり立ち替わり来る様子を見ると、ここは地域のHUBになっているんだなと思います。
(草):制作をしたい人にもっとこの場所を知ってほしいなと思います。デザイナーさんやライターさんがそれぞれ仕事をするんじゃなく、『そよ風プレス』のように連携して仕事をできる環境がco-labにはあるので、その良さを感じ取ってもらいたいです。
(山):co-lab墨田亀沢はデザイナーやライターやクリエイティブディレクターなどクリエイティブの川上にいる人がいるので、今回だけでなくサンコーとコラボレーションで仕事した事例がたくさんあります。最近もコピーライターやカメラマンの方などいろんな業種の人たちが入って、気軽に声をかけられる環境があるので、いろいろな人――たとえば弊社のような中小企業の方にも「co-labいいですよ!」と伝えたいですね。