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co-lab墨田亀沢の毎日

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あえて紙の価値を考える「紙de ナイト」Vol.4

今回で4回目となる紙deナイト。紙deナイトは「デジタルの時代に敢えて紙の価値を語る夜」と題して開かれるイベントです。第3回までの会場co-lab墨田亀沢を飛び出して、老舗印刷会社、加藤文明社さんが運営される「atelier gray」で行われました。

co-labの各拠点から集った参加メンバーは、エディトリアルデザイナーやグラフィックデザイナーなど紙を扱う方々を中心に、サンコーや加藤文明社さんも併せて総勢25名。
まずは『「デジタル×紙」デジタル印刷の事例を知る』をテーマに、加藤文明社の加藤社長にお話をいただきます。なぜ、デジタル印刷機を軸とした「atelier gray」をつくったのか、この場所からどんな展開を期待しているのか、じっくり語っていただきます。
本物を生み出す力「Rapid prototyping」が叶う場所
加藤文明社が2018年にオープンさせた「atelier gray」は印刷物の企画から製品完成までを担う拠点。高精細デジタル印刷機を備え、さまざまな資料や製品サンプル、製作ツールを保持しています。
「クリエイターやアーティストの方々とコミュニケーションを深められる場を持って、一緒に本物を生み出したいという思いがあったんです」(加藤社長)。

atelier grayの強みのひとつは、素早くプロトタイピング(試作)ができること。
印刷の専門家によるアドバイスのもと、最新鋭の設備で完成形に近い試作がスピーディーに実現。好きな紙を選んで印刷し、結果をその場で確認できます。パソコンを持ち込めばその場でデータを修正し、再チャレンジ。クリエイターにとって、これまで色校正等のやりとりをしていた時間を節約し、その分を創作活動に使えるメリットがあります。
atelier grayに来れば、加藤文明社と協力会社さんとのネットワークを活用できる点も魅力です。

「atelier gray」がデジタル印刷機「Jet press」を選んだ理由
続いて、atelier grayに鎮座する大きなデジタル印刷機の魅力についてお話しいただきます。
「まずは、色域が広いこと。一般的な4色印刷でオフセット印刷よりも幅広い色を表現できで、微妙な特色のシミュレーションもできます。プレコートというものを用紙に塗ると、オフセット印刷で使う殆どの紙に印刷できるので、版をつくることなく本紙校正ができます。もちろん、デジタル印刷機なので同じデータであれば再現性が非常に高いです」(加藤社長)

印刷スピードの遅さと価格の高さというデメリットはあるものの、教科書を長年印刷されてきた同社にとって、文字の再現性の高さは魅力だったそうです。
ここで参加者から加藤社長へ質問タイム!
Q:印刷機のバージョンアップはどうするの?
A:ソフトウェア的な部分は変えられても機械をカスタマイズはできない。基本買い替え。
Q:オフセット印刷する印刷物の色校正をデジタル印刷機で行うってコスト的に合う?
A:オフセット印刷機での本機校正と比べるとスピードと手間はかからない。普通の色校正とコスト的にはほぼ同じ。
また、デジタルはRGB(光の三原色)データでも印刷ができるので、そのままデジタル印刷機で出される方もいる。500部以下の場合はデジタル印刷機で印刷する方が安く済む可能性がある。品質の安定性はデジタル印刷機の方が高く、色域も広い。
Q:プレコート剤で紙肌や色味は変わる?
A:青みのある紙は多少黄みを増す感じがあるが、色と質感の変化はほぼない。

「atelier gray」のコーディネーターとオペレーターによるデジタル印刷実演!
ここからはコーディネーターの平井彰さんから、Jet pressのご説明。B2サイズまで4色印刷ができ、一度紙を掴むと4色刷るまでズレずに印刷できるそうです。
個人的に驚いたのは、Jet press自身がインクの詰まりや用紙のずれを検知してカバーする力を持っていること。最近の機械はかしこい…。

データの補正をすれば特色印刷に近い「疑似特色」が出せるのがJet pressの特徴。通常の4色印刷なので、特色で発生する費用も低減できます。版をつくらないので1部ずつ紙やデータを変えて印刷も可能。こだわりの強いデザイナーさんも、目で見て納得しながら完成に向かっていけるそうです。同じ絵柄のポスターとチラシなど、サイズや紙質が違う媒体の色味や質感合わせも得意です。

今回は、デジタル印刷機の魅力である「バリアブル印刷(1部ずつ違うものを一気に印刷できる)」でイベントチラシを印刷!

よく見ると、1枚1枚の文字色が違います。

これまでも、アート作品を3枚だけ印刷したいというご希望を訊き、その場でデータ調整しながら仕上げたり、有名書道家の100冊限定書籍を作る際は、現場で様々なサンプルを提示して一日で完成に近づけたりと、すでにatelier gray発の作品がたくさん生まれています。
特に、今日実験した「バリアブル印刷」でできた六本木クロッシングの図録にみなさん注目。(写真は、表紙の再印刷。少しずつ色味とデザインが違うのわかりますか??)


図録のデザイナー、美術出版社の中村遼一さんは「会のテーマ『つながってみる』から、ひとつひとつ違うものをつなげるという発想が浮かびました。さらに、新しいテクノロジーで『手に取りたくなる本』を生み出したくて、表紙を3,000パターン用意。どれも違うデザインなので、お客さまもじっくり選んで買ってくれたようです」と教えてくださいました。購買そのものが楽しくなるっていいですね。
最後に、恒例の懇親会!
加藤文明社の三河亮平さんから「こんなにも紙媒体のことを考えている方に会えて、自分たちも励みになるし、この先も新たな活路を見出したいという気持ちになった」とご挨拶が。

みんなそれぞれこの先を模索しているみなさん。話に夢中で、いつも通りケータリングが全然なくならない事態に(笑)。


きっと、新たな活路がこのatelier grayから、そして紙deナイトから生まれるはずです。

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