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co-lab墨田亀沢の毎日

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デザイナーとの合コン!?

12月5日、『デザインから会社の未来を考える~デザイナーと合コンしてみる?~」という勉強会を開きました。開催のきっかけは、今年5月に経済産業省から発表された「デザイン経営宣言」。
「日本企業の多くは、経営の有効な手段としてデザインを認識していない。国際競争力を回復させるためには経営者がデザインを理解し、事業戦略の最上流からデザインをからませることが必要だし、デザイナー側も経営を理解する必要がある」
ふた言にまとめるとこのような内容で、それを読んだco-lab墨田亀沢の有薗とインクデザイン合同会社の鈴木潤さんは衝撃を受けたのです。
有薗は、co-labの運営を通じて多くのデザイナーや個人事業主と仕事をすることで「デザイン経営宣言」と同じ感覚を持っていました。同時に、印刷業としてイノベーションを実現できたのは、まさに「デザイン経営」の糸口をつかんだからだとも感じていたそう。
鈴木さんもデザイナーとして多くの企業と協業する中、デザイナーという存在が特殊なセンスを持つアーティストのように見られ、デザインはいわゆる「飾りつけ」と思われていること、さらに経営者にとってデザインは「自分とは関係ない分野」と認識されている現実を見てきました。
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本当はそうじゃない。デザインはもっと身近なもので、経営に取り入れるだけで大きな投資を必要とせずに成長でき、差別化できるものだ。だからこそ、技術を持ちながら発信の方法に悩んでいるすみだの経営者にこそ「デザイン経営」のもとにある「デザイン思考」を知ってもらいたい。そんな思いから、勉強会を開くことに。
というわけで、経営とデザインの距離を縮める勉強会(という名の合コン)に集まったのは、墨田区内の中小製造業の経営者・後継者の皆さんと、co-lab墨田亀沢のクリエイターの皆さん。さらに「デザイン経営宣言」を発信した経済産業省や墨田区役所、そして島根県庁など行政の方々も参加してくださいました。
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早速、距離を縮めるワークショップスタート。最初のプレゼンターは鈴木さん。「名刺にすらデザインがある」というタイトルが示すことって? 少しハテナな空気のまま、たくさんの名刺がテーブルに並べられました。参加者のみなさんも、手持ちの名刺を取り出して並べます。
「直感で『これいい!』と思う名刺を3枚選んで、その名刺にふせんを貼ってください」
みなさん、いいペースでふせんをペタペタ。
 
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楽しそうな様子にブログ担当もうれしくなりましたが、一枚もふせんが貼られていない自分の名刺を発見。選ばれないと内心ショックなものですね(苦笑)。
貼り終わったところで、鈴木さんがふせんのついた名刺を分類して並べていきます。
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すると、ふせんが複数貼られた名刺は一定の形に偏っていることが見えてきました。まず、縦型のシンプルなものに人気が集中。
「このタイプの名刺をつくるのに特殊なセンスは必要とされません。配置や書体などの単純な要素だけで、人が『なんかいい』と感じるものがロジカルにデザインできます。逆に、自社のPRがびっしり書き込まれたこの名刺(しかも三つ折りで、もはやリーフレット!)は誰にも選ばれてないですよね。受け手の気持ちを想像できてない一人よがりな名刺はデザイン思考がないから見てもらえない」
もうひとつは、某ファストフードチェーンのポテト型やマフィン型に切り取られた名刺。もらうだけでちょっとうれしい。というところまで振り切った超個性派も票を集めました。これも、自社商品の知名度を活かしたデザインと言えそうです。
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逆に、日本の大手商社や行政の名刺は選ばれませんでした。すべて横長横書きで、右上のロゴを変えれば商社と区役所が入れ替わっても通用しそう。無理やりデザインの意図を見出すなら、無個性化することで会社の伝統を演出したり、公的機関らしい安心感を表している…のかもしれません。
「名刺一枚でもデザインを取り入れることで、ライバルから抜きん出る可能性が高まります。デザインは『飾り』にとどまらない。印象を左右するほど力強いんです」(鈴木)
続くワークショップは「デザイナーの考え方に触れる」というタイトルで、有薗がプレゼンします。名刺にすら宿せるデザインを、ビジネスの課題解決に実際使ってみよう! ということで、今日は「新卒採用に使える自社のキャッチコピー(20文字以内)」をつくっていきます。
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経営者にとって、人材採用に関する悩みは不変。コピー作成という「言葉のデザイン」を通じてデザイナーの思考回路、つまり「デザイン思考」を追体験してほしいというおもいです。
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※デザイン思考(でざいんしこう、英: Design thinking)とは、デザイナーがデザインを行う過程で用いる特有の認知的活動を指す言葉である。(Wikipedia)
ちなみに、有薗が社長を務める株式会社サンコーで「言葉のデザイン」をして採用記事をつくった結果、2週間で6名の応募があり、2名の採用にいたったという実績があります。
FireShot Capture 20 - 想いを、綴じる - すみだの仕事(のしごと) - https___sumidanoshigoto.com_cate-recruit_21860

(出典:すみだの仕事webページ https://sumidanoshigoto.com/cate-recruit/21860

しかし、普段であればこの作業は「言葉のデザイナー」であるコピーライターが行うはず。経営者の方々は戸惑いを隠せない様子ですが、ワークシートは淡々と配られていきます…。
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採用のコピーは、多くの情報に接する学生を最初に惹き付けるためのもの。自社の情報を伝え、さらに学生が興味を持ってくれるようなコピーをどのようにデザインしたらいいのか。今日の勉強会の席順が、経営者とクリエイター―がなるべく交互に座るように設定されていたのはこのときのため。経営者はクリエイターと話しながらデザインを進めていきます。
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配られたワークシートに沿って、まずは「①学生像の明確化」。どんな学校を出て、どんな専門性のある人を採用したいのかなどの機能面を定め、実際、就職活動に臨む今どきの学生はどんな人物なのかを想像します。終身雇用に期待していない、プライベートも大事にしたいといった特徴や、その背景にある人生観まで想像するのが大切です。
続いて、「②イメージの特定」。①で想定した学生が自社を見たとき、どんな第一印象をもってほしいかを考えます。成長できそう、こんなスキルが身に着きそう、雰囲気がよさそう、プライベートも大事にできそうなどなど、会社によって大きく異なる部分です。
次に、「③要素の書き出し」
ここでは、先ほど②で特定した「自社のイメージ」を説明できそうな要素をできる限りピックアップ。仕事の進め方、持っている技術、休みの取りやすさなどの特徴だけでなく、どんな思いで仕事をしているか、企業理念等も説明材料になりそうです。これが、この先のコピー製作に大事なステップ。
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いよいよ、④コピーづくりです。書き出された要素を組み合わせ、なるべくたくさん出します。一例を示すと
① 職種が営業なので、採用したいのは人の話が聞ける人。
最近の学生は、出世欲は少なそうに感じる。
② 他人を蹴落とすことなく、一緒に頑張れば報われる。という印象を持って欲しい。
③ 社訓が「誠実と努力」。
実はあまりライバルがいない業界
→コピー案「器用に生きるのはちょっと苦手。そんなあなたと働きたい」。
クリエイターが経営者のお手本になれるはずの④コピーづくりですが、予想外に苦戦するクリエイターが印象的です。感覚的にできていることをロジカルに組み立てるのが意外と難しいのかもしれません。
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苦しむクリエイターを横目に、さらさらペンを走らせる経営者も。「カンニングはどんどんしてください」という言葉に即立ち上がってヒントを探る方もいて、その場で話が盛り上がります。
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最後にいくつか出てきたコピーから、ひとつを選び出します。選ぶ基準で一番大切なのは「学生像の明確化」の部分。対象者である学生に、自分の会社をどんな風に思ってほしいのかをもう一度考えます。
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グループで選んだコピーをもとにディスカッションした後、似た業種の経営者お二人にコピー案を発表していただきました。それが、不思議なほど違ったのです。「とにかく考えよう!」と作り始めたら、「高い技術で信頼にこたえる」のようなありきたりなものになっていたかもしれません。今回のキャッチコピー制作手順は、デザイン思考のプロセスにのっとったもの。デザイン思考で生み出されたコピーが唯一無二のものだったことは、伝えたい相手の像も、伝えたいことも会社ごとに異なることをはっきり示します。
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それらを明確にするだけで、デザインするための準備は完了。最終的なアウトプットはプロにまかせても、社内で話し合って決めても、きっと会社を前に進めるものに仕上がるはずです。
 
お疲れさまでした! 感覚も頭もたくさん使うワークショップを終え、プレゼンター二人が語ります。
「作れば作るだけ売れた1から100の時代を経てきた中小企業も、0から1を生み出さなければ生き残れない時代が来ています。0から1を生み出すには、クリエイティブの力が必要だし、経営者とデザイナーは互いの思考方法の違いを理解して向き合うことが大事。先代から会社を継いだすみだの経営者たちは発注元の言いなりでものを作るのではなく、よく観察して問題提起する姿勢が必要だし、デザイナーの人たちは、DNAレベルで刻まれている中小企業の「下請け体質」を理解し、一緒に提案方法を考えてほしい。プロの力を貸してほしい。両者が思考回路を理解し合い、コラボレーションしてすみだの技術に新しい光が当たってくれたらうれしいです」(有薗)
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「キャッチコピーをつくるとき、経営者が語ってデザイナーがそれに耳を傾けるシーンがあちこちで見られました。これがデザインの第一歩だと僕は思ってます。誰かの表現したいことをより効果的に伝えるためにデザインはあるので、デザイナーの仕事は、まず経営者の方の熱い想いを聴くこと。同時に、経営者にまれに言われるのが「いい感じで適当につくって」というオーダーなんですけど、そんなのは無理です(笑)! 0から1の仕事をするためには、企業もデザイナーも自分から世の中に「好きなこと、得意なこと」を発信することが大事になる。発信し合って受け取り合うことで、企業やクリエイターはもちろん、日本も元気になると思います」(鈴木)
そして「デザイン経営宣言」の取りまとめにも関わられた経済産業省の菊地拓哉さんにも感想をいただきました。
「今は低成長時代。国際的な競争力を再びつけるためには、差別化とイノベーションが必要だというおもいで『デザイン経営宣言』を発信しました。宣言そのものは大企業向けの取り組みのように感じられるかもしれませんが、中小企業でもどんどん取り入れて、先行事例をすみだから生み出してほしいです」(菊地)
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クロージングトークに寄せられた拍手、とても温かかったです。
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よい雰囲気のまま、お待ちかねの交流会。デザイナーと経営者、行政関係者が入り交じって乾杯です! 全然合コンっぽさは感じられないのですが、多様な立場の方々が熱く語り合うひととき。ケータリングもちょっと余ってしまったくらい盛り上がっていました。
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デザインと経営が近付くってそんなに難しいことじゃなくて、お互いの考えや思いを訊き合うことで実現できるんだろうなと感じます。「あの勉強会が始まりだった」と、経営者とデザイナーがわいわい乾杯する日も近いかもしれません。きれいにまとめると「デザイン経営宣言」の先進事例が、墨田区から生まれることを大いに予感させる交流会になりました。日が替わる直前まで続き、最初なかったワインがいつの間にか開けられていたのも、たくさん用意したハイボールがなくなっていたのもまた一興。(co-lab墨田亀沢メンバー 岡島)
 

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