Who’s working? 第2回 株式会社F Connect 江口一啓さん
co-lab墨田亀沢には様々な活動をされているメンバーさんがいらっしゃいます。
その活動をインタビュー形式でご紹介するシリーズ“Who’s working?”
第2回目は『株式会社F CONNECT』の江口一啓さんです。
今回、江口さんには現在のお仕事やco-lab墨田亀沢に入ったきっかけなどについて伺いました。
ライブ制作とは
――現在の主なお仕事は何ですか?
1つはライブの制作です。年間のスケジュールから考えて、「ここの時期にライブやりましょう」というのをこちらで決めます。そして、会場をおさえて、いつどういうタイミングでチケットを売ったらいちばん売れるかを考えて、チケットを手配する。ライブの演出においては、主催者がこういうライブにしたいというのを聞いたうえ、音響さん・照明さん・舞台監督さんなどのテクニカルにアサインしていきます。ツアーだったら、宿泊や移動など諸々の行程も全部組んで手配します。ほかにも、ライブに紐づくグッズや資材等々の営業もしてますね。
――聞いてるうちに、作業量の多さに滅入ってきました……
(笑)。そうですよね。
――いま聞いた印象だとライブ始まる前はプロデューサー要素もあり、始まるとディレクター要素もある仕事のような気がしたのですが。
いや、プロデューサーとかディレクターとかは別にいるので。僕の場合は、あくまで提案する形です。「いま最新の技術だとこういう演出がありますよ」とか「このグループだったらこういうふうにやったほうがいいんじゃないですか」とか。
――なるほど。演者と裏方をつなぐ役割と言いますか……
基本、全部の窓口は僕なんですよ。演者の質問も裏方の質問も答える窓口。セットリスト(楽曲リスト)をもとに進行表の作成や当日に「この人がこういうふうに動く」という手配、リハーサルの手配も全部やります。
当日はじまってから何もすることがないという状態が、いちばん仕事ができる制作って感じです。
――ご自身でバンドとかやってたんですか?
中2のときに2か月くらいやってましたね。このころから裏方でした(笑)。
デジタル版の卸
もう1つはApple MUSICやSpotifyなどの音楽配信サービスのディストリビュートや音楽系のYouTubeチャンネル運用管理の営業です。
――サブスクの仕組みが全然わかってないんですが、ミュージシャン側から配信業者に登録を申請するっていう流れなんでしょうか。
シンプルにいうとそうなんですけど、タワレコとかHMVをApple MUSICやSpotifyに置き換えていただくとわかりやすいです。無名のミュージシャンが「タワレコにCD置きたいんです」って言って置いてもらうのは難しいじゃないですか。そうしたミュージシャンの作品が店頭に置いてもらうまでに何が必要かというと、ディストリビューターという流通会社なんですね。1000~2000のアーティストの作品をとりまとめて、レコード店におろすという卸の仕事があるんですけど、それのデジタル版をやっていると考えていただければ。
――そうした配信業者に対して営業もなさってるんですか?
はい。YouTubeの広告やTikTokのインフルエンサーを使ったPRのほか、Apple MUSICやSpotifyにはプレイリスト(選曲されたリスト)があるんですけど、そのプレイリストを選ぶエディターといわれる人に「これ聞いてください」と営業していますね。
――なるほど。YouTubeは利用者の目から見ても、仕様が細かく変わるので対応するのが大変なのではないかと思うのですが。
そうですね。なので、月に1回2回、YouTubeなりSpotifyなり日本の担当者がいるので定例会をやって、いろんな知識のバージョンアップをしてます。
co-lab墨田亀沢に入ったきっかけ
――ここに入ったきっかけは何だったのでしょうか。
元々、CHARI YA TOKYOというインバウンド向けのサイクリングツアーガイド・飲食の事業もしていました。
(CHARI YA TOKYO PV from Ikkei Eguchi on Vimeo.)
浅草の本拠地を事務所にしていたのですが、コロナ騒動で明らかに海外からのお客さんが激減したので一時閉業しました。いよいよ事務所も引き払うことになったとき、ものコト市(台東区のイベント)で知り合ったライターの草野(明日香)さんから紹介してもらいました。
――そのときはどういう相談をされたのですか?
すでにCHARI YA TOKYOは法人化していたので登記するところが必要だし、オフィスがあるほうがいいので、「あんまり遠くないほうがいい」「予算もこのくらいで」という条件を出して相談しました。
co-lab墨田亀沢に合う人
――co-lab墨田亀沢をどんな人にすすめたいですか?
オシャレすぎる感じや、意識高すぎる系が苦手なクリエイターさんにお勧めだと思います。
――すぎる系(笑)。その理由は?
雰囲気がすごく自然体な方が多いからですね。ザ・デザイナーさんというよりかは、まっとうな社会人の方が多いなと思うんです。ハチャメチャな人とかはいないから、すごくいい環境だなと思います。
仕事を続けるコツ
――最後に。仕事で大事にしてることはなんでしょう?
忙しいと言わないことですね。やってることはどんどん発信するんですけど、でも最近どうですかと聞かれたら「ヒマですよ」と答えるようにしてます。
――頼みやすいということですね。
そうですそうです。Facebookでクライアントとなりえる人とはつながっているので、自分がいまこういう仕事してると発信して、相手から「頼みたいけど忙しそうだな」と思われていても、聞かれれば「全然ヒマ」と答える。すると、「じゃあ相談したいんだけど」と聞かれて仕事につながるという流れを20年間くらい続けてます。
あと、心なくしちゃうと我々の仕事ってだめだと思います。なので、絶対に右から左に流さないで自分のなかで消化して吸収して出していくということは意識しています。
江口さんのお話を伺うと、最初は仕事量の多さに呆然としてしまいました。しかし、配信というコロナ禍で需要の高まった事業に深く分け入り、苦境に立つエンターテイメント業界の当事者にいかに還元できるかに腐心しているか聞いていくと、仕事の多彩さの裏に一貫して音楽を支える職人の姿が見えてきました。
次回は『ビガップ』の児嶋真人さんにお話を伺います。お楽しみに!