印刷力セミナーvol.2 「もっと印刷職人と話をしよう」を開催しました
グラフィックデザイナーなど印刷物の製作に関わる方を対象として、サンコーの印刷職人から印刷に関わるディープな話を聞くことができる「印刷力」セミナーの、vol.2を10/28(金)に開催しました。今回はグラフィックデザイン、紙加工、など印刷物に関わるお仕事をされている方に加え、DTPに関する教科書を出版されている方など、その道のプロを中心に14名の方にご参加頂きました。
ファクトリーツアー
4色機が動くところを実際に見てもらいました。
まずは工場の見学です。グラフィックデザイナーであっても、印刷工場に立ち合いに行く機会はずいぶんと減っているようで、機械が轟音を立てて印刷を始めると皆さん興奮されます。
セミナー
続いて、co-lab墨田亀沢に場所を移し、セミナーの部の開催です。
データチェックに関する説明
まずはDTP部門の責任者である渡辺俊哉より、データ入稿の注意点に関するお話しをさせて頂きました。トンボが無い、アウトラインが取られていない、プロセス4色印刷なのに特色が指定されている、4色掛け合わせの濃度が高すぎる、といった初歩的なデータ不備って、実は結構多いんです。サンコーでも、1日に数件は発生しています。そのような不備が発見されずに作業が進んでしまった場合、誰かが不幸になるから注意しましょう。という話しから、CS5以前とCS6以降とで、特色をCMYK変換した場合の変換ロジックが異なっており、過去のデータを再利用した場合に、色がくすんでしまうトラブルなどについて説明させて頂きました。
参加者の方々からは、「オーバープリントと乗算はどう違うのか?」「入稿時の画像データはjpegとepsとどちらが良いのか?」「AdobeRGBとsRGBのどちらで画像を調整したほうが良いか?」などの質問が多く出ていました。
続いて、スキャナー・画像担当の井上利之より、画像に関するご説明です。まずは、印刷に必要な解像度と画素数の関係について。画素数は1枚の写真全体で画像を構成するドットの数で、解像度は1インチあたりのドットの数を指します。印刷の場合、大切なのは画素数ではなく解像度であり、300dpi程度が適切です。同じ画素数の画像でも、使うサイズによって解像度は変化するため、画素数が小さい画像を大なサイズで使うと、解像度が低すぎて印刷に使えなかったり、小さい画像サイズなのに必要以上に画素数が大きいと、解像度が高くなりすぎてエラーになるケースもあります。
そして、いつも皆さんに高い評価を頂いている、印刷した際になぜ色がくすんでしまうのか。それをどうやったら回避できるのか。についてのデモンストレーションへと続きます。そもそも、CMYKで表現される紙とRGBで表現されるモニターでは、表現できる色領域に違いがあり、モニターで見た通りの明るい色は印刷では再現できません。そのためCMYK変換する事でくすんでしまう色から、出来る限りに濁りの要素を取り除き、コントラストを調整することで、あたかも同じ色であるかのように見せていく必要があります。その場合の調整方法についてご説明をしました。
そうそう、井上からのアドバイスですが、「RGBからCMYKに変換して、明るい色のデータが失われてしまったあとに、RGBに再度変換しても、一度失われた内容は復活しないので、画像修正前の元データは、必ず残しておきましょう。」とのことでした。皆さんお気をつけください。
実は話し好きな印刷職人とのトークセッション
セミナーの最後は、印刷立ち合いで何に気を付けたらいいか。と言うテーマで、印刷部門の責任者である福沢彦之と、co-lab墨田亀沢のチーフ・コミュニティ・ファシリテーター兼サンコー経営企画室長である有薗悦克のトークセッションです。カラー印刷の場合、印刷オペレーターは4色のインキの量をコントロールすることで、お客様の望む色合いを出して行きます。でも、そのゴールにたどり着く道は、実はいくつもあります。例えば写真が赤味を帯びているのを直したい場合、マゼンタを下げる以外に、シアン・イエロー・スミの3色を上げることで、相対的に赤味を引く事もできます。でも、「赤下げて」ってやり方を指示されてしまうと、それ以外の方法の方が良いと思っていても、言われた通りにやってしまうこともあります。なので、「こうしたい!というゴールを職人に直接伝えて、そのゴールにどう到達するかは、職人に任せるのが良いやり方。」そして「職人は実は寂しがり屋。愛想は悪いが、実は心の奥では声を掛けてほしいと思っている。」なんて本音も飛び出していました。
写真撮影の合言葉は『アドビー』
セミナーのあとは懇親会に突入。セミナーで聞き足りなかった事について、質問が飛び交い、予定の時間を大幅にオーバーして終了しました。
とても熱量の高い懇親会となりました
以前、グラフィックデザイナーと印刷会社はもっと近い存在でした。しかし、時代とともに、その距離が遠くなって行ってしまいました。その結果として、お互いが相談し合っていれば起きなかった不具合や、不便がいくつも起きている気がします。「ものづくりのクリエイターと職人が出会い、化学反応が起きる『場』」を目指すco-lab墨田亀沢としては、このような出会いの場をこれからも作っていきたい。そして、デジタル化が進むこの時代だからこそ、紙メディアの新しい価値を作り上げて行きたい。このセミナーを通じてそんなことを考えました。ご参加頂いた皆様、有難うございました。
懇親会が終わっても、印刷談義は深夜まで続くのでした…。