大人の社会科見学『印刷・加工現場を巡るツアーvol.1』が開催されました
同時期に江東・墨田・渋谷にオープンした印刷・紙加工の拠点、Factory 4F(紙加工)・co-lab墨田亀沢(オフセット印刷)・Printworks Studio Shibuya(活版印刷)それぞれの現場の声と魅力をリアルにお届けする『大人の社会見学』ツアーの第1弾が、6月24日にFactory4Fにて開催されました。
Factory4Fは、断裁や製本を本業とする有限会社篠原紙工さんが、文字通り本社工場の4階にオープンさせた施設で、紙加工の広場をコンセプトにしています。
多くのお客様がいらっしゃって、座席は満席。
まずは3つのグループに分かれてファクトリーツア―です。
最初に断裁の工程。印刷が終わった紙は、ここで大きく断裁されます。断裁するときには、全ての紙がぴったりと揃っている必要があります。そのために、紙と紙の中に一度空気を含ませて動きやすい状態にして、機械で振動を与えながら、整えて行きます。空気を入れるためには、大きな紙の両側を持ち上げることで、紙1枚1枚の間に隙間をつくります。この作業は、印刷機に紙を積むときにもやるのですが、結構重たくて大変な作業なのです。職人さんは大量の紙を持ち上げて何気なくやっていますが、参加者の人がやってみると半分の量でもうまくできません。
紙がきちんと揃ったら、今度は紙に圧を掛けて間に入っている空気を押し出します。空気が抜かれた状態で10センチ以上の厚みのある紙の束は、今度はピッタリとくっついて少々の衝撃ではびくともしないほどの塊りになります。その状態で断裁をします。この厚さを切るのに、ほんの一瞬。見学者からは歓声があがります。
断裁のあとは、折りの工程に進みます。折りの原理は、下の写真のようになっています。右側から入った紙が0と1のローラーに導かれて左上に向かっている羽根に入っていきます。そして、留めと呼ばれる部分に当たると、0と2のローラーの間に弛みが生まれ、やがて0と2のローラーに吸い込まれていきます。それによって紙がおられて下に降りてきます。その次に右下にある羽根に入っていき…。文章で説明するのは難しいです。毎週水曜日にFactory4Fさんはファクトリーツアーをやられているので、興味のある方は参加してみることをお勧めします。
実際の折り機もこの原理で動いていて、羽根が沢山あることで複雑な折りを実現しています。
また、篠原紙工さんと言えばマジック折り。1枚の紙の一部切れ目を入れて折る事で、冊子のようにページをめくる事もできるし、1枚に広げることもできる。そんな不思議な折りがマジック折りなのですが、その工程も見ることができました。羽根を使った折りと、ナイフと呼ばれる機会で叩くことで折る工程が組合わせて出来上がります。
ファクトリーツア―の最後は、コバ塗りのワークショップです。コバ塗りとは、紙の断面の部分に色を付ける加工です。冊子の背表紙以外の三方や、名刺の外側などに色を付ける作業です。色ごとに難易度が異なるのですが、一番難しい赤に挑戦。
上下のグレーの部分は塗りやすくするための捨て紙で、真ん中が塗りたい部分の紙です。なかなか綺麗に出来たと思いません?
その後、Factry4Fに戻って、トークセッション開始。
今回のトークセッションのテーマは、「モヤモヤトーク」。なぜモヤモヤかと言うと、実はこの3つの施設は、昭和47年~49年生まれと、年齢がほぼ同じ印刷業界の後継者3人が、毎日の仕事の中で「このままでは仕事が面白くない。業界も衰退していって経営者として未来を描けない。」とモヤモヤしていたことから生まれた。という点が共通しています。そのモヤモヤが、物件が空いたことをきっかけに「こんな場所を作ったら何か変えられるのではないか?」と爆発して、昨年12月にPrintworks Studio Shibuya、3月にco-lab墨田亀沢、5月にFactory4Fとほぼ同じ時期にオープンを迎えました。そんなモヤモヤしていた頃に考えていた事、今動き出して何が変わっていったか、そして紙に関わる業界を元気にしていきたい。そんな熱いトークが繰り広げられました。
次回の大人の社会科見学『印刷・加工現場を巡るツアーVol.2』は7月29日にco-lab墨田亀沢にて開催されます。Vol2では、オフセット印刷をテーマに、ファクトリーツア―や職人さんに聴いてみたコーナーなどを計画しています。詳細が決まりましたら、facebookやwebにてお知らせします。ご期待ください。
そして最終回のVol3は、8月26日にPrintworks Studio Shibuyaにて、印刷の歴史を学んだ後に、活版印刷を体験するワークショップを実施する予定です。この3か所を回れば、あなたも印刷通になれますよ。
≪チーフ・コミュニティ・ファシリテーター 有薗≫