1st anniversary party を開催しました
2015年3月にオープンしたco-lab墨田亀沢は、お陰様で1年を迎えることができました。今まで支えてくれた皆様への感謝をお伝えするとともに、これから向かっていく方向をお伝えすべく、1周年パーティを開催しました。オープン時期から考えると、本当は3月に開催する必要があるのですが、3月は実は印刷会社にとって最も忙しい1か月なんです。例えていうならば、ショコラティエにとってのバレンタインのように。なので、4月に入ってからの開催となりました。
展示コーナーでは、この1年間で取り組んで来た様々なプロジェクトやイベントをご紹介しました。この写真は、すみだ北斎美術館、浜野製作所とコラボレーションして、葛飾北斎の浮世絵を、デジタル技術で再現するプロジェクトです。昨年夏にワークショップを開催し、多くの方に浮世絵作りを体験して頂きました。
これはパネルディスカッションでも登壇頂いた、moi coffee の守田篤史さんとコラボレーションして生まれた、温度で絵が変化するブックカバーの展示です。小説を読んでいて手に汗握る展開になると、手の温度に反応して手が触れた部分が黄色の斑点に変わります。サンコーの持つインキや印刷に関するノウハウと、クリエイターのアイディアが結びついて生まれた作品です。
物販コーナーでは、メンバーさんが制作に関わられた商品を販売しました。どんな商品か簡単にご紹介すると
- 4F BOX 紙加工の見本セット
- すみのわ 墨田区の福祉作業所とクリエイターがコラボレーションして生まれた地域ブランド
- 印刷加工連 印刷・加工の6社で結成された文具ブランド
- futacolab 世田谷区の福祉作業所とクリエイターがコラボレーションして生まれた地域ブランド
このような素晴らしい取り組みと一緒に、サンコーの印刷工場で出た残紙をメモ帳にした残紙メモも片隅に置かせてもらいました。
16時にオープン早々に山本亨・墨田区長と澁谷哲一・東京東信用金庫理事長のお二方がお見えになりました。お忙しいところ、有難うございます。
また、来場された皆様には、サンコーの工場を見て頂くFactory Tour を実施しました。グラフィックデザインをされている方でも、特色インキを作る過程などはなかなか見る機会がないそうで、みなさん興味津々にご覧になっています。3階のシェアオフィスから階段を降りたらすぐに印刷工場があって、色や紙に関する専門的な相談をすぐに受けることができるのも、印刷工場直結型シェアオフィスであるco-lab墨田亀沢のメリットの1つです。
19時からは基調報告として、墨田亀沢でチーフ・コミュニティ・ファシリテーターを努める有薗悦克より、この1年間取り組んで来たことについてご説明をさせて頂きました。1年前、この場所をオープンするときには、単なるシェアオフィスとして閉じられた空間を作るのではなく、地域の人達や地域の産業とクリエイターとの交流を通じて、新しいコトを起こしていきたい。そんな風に思っていました。それがこの1年で少しずつ形になってきたこと。その結果として、ここで目指すことは、もの作りの職人とクリエイターが出会い、化学反応が起きる『場』なんだ。と言うことがはっきりと見えてきたこと。そんなお話しをさせて頂きました。
そのあとは、パネラー4名に登壇頂き、「印刷職人とクリエイター 化学反応から生まれた製品達」というテーマでパネルディスカッションに入りました。
最初にお話し頂いたのは、co-lab二子玉川のメンバーでもある株式会社グラディエの磯村歩さん。futakolabという世田谷の福祉作業所とパティシエとコラボレーションした地域ブランドを企画されています。サンコーには、焼き菓子を包装するPP袋のご相談がありました。PP袋への印刷には複数の方法があり、それぞれ適したロットや表現する上での制約条件が異なります。サンコーは、プロのネットワークとノウハウで、ベストな機械をセレクトしご提案しました。
続いてNicoli Graphicsの三輪明日香さん。墨田区の福祉作業所との取組をされていて、お菓子のパッケージ作りをお手伝いさせて頂きました。「商品の質感に合うクラフト紙をベースに使いたい。でもコーポレートカラーの金赤がくすんでしまうは困る」というご相談を受け、デザインをする前の段階で紙と色の相性からテストをしました。写真に写っている紙が、実際にテストをしたときの紙です。このように、様々なクラフト紙に金赤を載せ、色の出具合を見てもらってからデザインに入って貰いました。
次にご説明頂いたのは、パーティの会場で美味しい珈琲を淹れてくれたmoi coffeeの守田篤史さん。焙煎もするアートディレクター・グラフィックデザイナーです。当初ご相談頂いたのは、温度で色が変わる液晶印刷をできないか。という内容でした。しかし、手間のかかる液晶印刷では、とても商品化出来る金額には収まりません。そこで、サンコーからメタモインクという別の示温インクを使って、オフセット印刷と組み合わせる方法で、本を読む興奮を視覚的に表現することはできないか?という提案しました。その結果、デザイナーとしてのインスピレーションが湧き、色紙の上にオフセット印刷で黒を刷り、そこに温度が上がると消えるメタモインクの黒を合わせることで、江戸時代から伝わる鮫小紋柄柄を、温間時にも冷間時にも浮かび上がらせる。という表現に行きつきました。そんな、1年半近くかかった商品開発におけるやり取りをお話し頂きました。
co-labの企画運営をされている春蒔プロジェクトの田中陽明さんからは、フリーランスの人たちが集まってゆるやかな組織体になることで、大企業と対等に仕事ができること。co-labはそのようなシェアオフィスを目指していること。さらにその組織体が、地域の産業とコラボレーションしたり、まち作りに参加したりと、クリエイティブな視点で地域活性化に貢献する事例が増えていて、co-labは地域コミュニティのハブになりつつある。と言ったお話しを頂きました。
約1時間のパネルディスカッションを終えて、浜野慶一・浜野製作所社長に乾杯のご挨拶を頂き、パーティが開始しました。パーティの料理はCafe POKAPOKAさん、Smile Kitchen さんにご協力頂きました。
1年間のパーティでは足の踏み場も無いほどに多くのお客様にお越し頂きましたが、今回も100名を超える方にお集まりいただきました。そのために、料理が一瞬で無くなってしまう事態に…。お腹が空いていたのに食べられなかった方、ごめんなさい。
最後に記念撮影を行いました。この写真は、実は3枚に分けて撮影した写真を、1枚に合成しています。使っているソフトは一般的な画像処理ソフトですが、テーブルに全く歪みが無いことや、明るさにムラが無いことなどは、職人の拘った部分です。
この1年間、多くの方に支えて頂き、このパーティを迎えることができ、感謝の気持ちでいっぱいです。この場所を通じて、クリエイターと職人との化学反応を沢山起こして、新しいもの作りが産まれ、もの作りの町であるすみだを元気にしたい。そして、日本のもの作りが元気になる事に少しでも貢献できたら。そんな思いを新たにしました。
co-lab墨田亀沢 チーフ・コミュニティ・ファシリテーター 有薗悦克