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co-lab墨田亀沢の毎日

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あえて紙の価値を考える「紙de ナイト」Vol.7

1月20日、co-lab墨田亀沢で「紙deナイトvol.7」が開かれました。
サブタイトルは「デザインの定量評価について考える」。
今回のテーマはコニカミノルタ株式会社が開発したEX(explainable・説明可能な)感性についてです。
EX感性では注目評価(デザインのどこに注目が集まるか)、印象評価(どんな印象を与えるか)をシステムで行うことができるので、その効用やデザイナーとクライアントの関係づくりについて参加者の方々と話しあう会になりました。
co-labの各拠点から集った参加メンバーはデザイナーや編集者やクリエイティブワークなど多彩で、会場で参加した方が20名、zoomで参加した方が25名いらっしゃいました。

購買行動をデザインするために

プレゼンの前半を担当されたのは、コニカミノルタ株式会社でEX感性の開発をしながら広島大学客員教授も務める浦谷勝一さん。

浦谷さんは、「なぜそうなのか」「どうすれば解決できるのか」を科学的に説明するEX感性の前提となる行動経済学を豊富な資料で説明してくれました。
まず、16世紀後半から20世紀前半まで、経済学者は人が経済的合理性に基づいて行動すると考えていました。マルクスやケインズなどがその代表例です。20世紀後半、経済学に心理学をかけ合わせた行動経済学という新しい学問が勃興し、人は必ずしも合理的な行動をするわけではないと分析されるようになります。
例えば……
A:コインの表が出たら2万円もらえる/裏が出たら1万円払う
B:何もせずに1万円もらえる
という設問をすると、AもBも期待値は一緒なのですが、たいていの人はBを選ぶそうです。
そうした研究から「人は得するよりも損することを過大評価する」というプロスペクト理論が導き出されます。

浦谷さんはこうした行動経済学の理論がいかにCMや企業広告で使われているかを話してくれました。
最後、浦谷さんは人の行動の理由を理解してどのように戦略的に提案するかが重要だとまとめ、購買行動をデザインするためには、こうした論理的説明と直感的なデザインが大事になるとおっしゃいました。

EX感性とは

プレゼンの後半を担当されたのは、同じくコニカミノルタ株式会社のカン・ソギョンさん。
カンさんはEX感性の理論的背景と運用についてプレゼンしてくれました。

まず、売れるデザインをつくるには有名なAIDMA理論が重要だとカンさんは説明を始めました。
その理論とは、Attention(認知)→Interest(興味)→Desire(欲求)→Memory(記憶)→Action(行動)という消費者の購買プロセスをモデル化したもの。例えば、訴求ポイントが目立っているか(認知)、ターゲットが好むコンセプトか(欲求)、他の商品との差別化ができているか(記憶)のように、人が広告を見たときに感性に訴える要素を備えているかがデザインにおいて重要になります。
EX感性とはこうした人の感性を見える化し、人の購買行動である認知・興味・比較をデザインの要素で紐解くことで売れるデザインにつなげるデジタル解析オンラインサービスです。
コニカミノルタさんはもともと印刷機やプラネタリウムなど何かを見えるようにすることにこだわりがある企業。その技術に脳科学の知見をかけあわせ、作りあげたのがEX感性なんですね。
認知のメカニズムを例にとると、われわれがモノを見るときには後頭部にある一次視覚野が働いており、「形」「光度」「色」にわけて反応したあと、総合的に判断しているようです。これをソフト上に適応します。

数値化することで注目性の操作が可能になり、注目性があがればアイキャッチし、記憶に残りやすいなどの効果が出ます。
このように、カンさんのプレゼンはAIDMA理論を1つ1つ追いながら、デザインを数値化して検証する実証的な発表でした。
最後は実際にソフトを立ち上げて、運用の仕方をデモンストレーションしてもらいました。

質疑応答を挟んで懇親会が始まると、実際にEX感性を体験し、いろいろと考えをめぐらせるデザイナーさんの姿も見えました。

こうやって、新たなクリエイティブが生み出されるんですね。今後どのようにデザインに運用されるか期待したいと思います
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