Who’s working? 第9回 株式会社HaS 皆川拓さん
co-lab墨田亀沢には様々な活動をされているメンバーさんがいらっしゃいます。 その活動をインタビュー形式でご紹介するシリーズ“Who’s working?”
第9回目は『株式会社HaS』の皆川拓さんです。
今回は皆川さんに現在のお仕事やco-lab墨田亀沢に入ったきっかけなどについて伺いました。
「メキシコ×日本」の建築
――現在のお仕事は何でしょうか?
建築設計です。主に、住宅の設計や宿泊施設を手掛けています。元々、AQTという設計事務所を経営しているのですが、今年の春に株式会社HaSという会社も立ち上げました。どちらの会社も日本とメキシコの両方で事業を展開している点が特徴ですね。
――こないだのプレゼン会でメキシコでも仕事するのは「奥さんがメキシコ人だから」とおっしゃっていました。そのことがメキシコと日本の2拠点で事業を展開されている理由ですか?
そうですね。それに加えて、向こうに行って魅力的な土地や文化に触れたので、メキシコでも仕事をしたいと思いました。あと、日本の文化と掛け合わせてやってみるのも面白いと思ったのも大きな理由です。
――メキシコ人スタッフや職人さんとのコミュニケーションで困難を感じる点はありますか?
スタッフとはないですね。建築という共通言語がありますし。職人さんはラテンの人だからか、あまり仕事しないこともあります(笑)。進み方も日本よりも大分ゆっくりしたペースですね。例えば現地の職人さんはできるだけお金を稼ぎたいので「1日の仕事に3日かければ3日分もらえる」という発想になります(笑)。なので、日払いじゃなくて「ここまで出来たらいくら払います」という話をすることになります。
ローカルとはこの星の魅力
――AQTにないHaSの特徴は何でしょうか?
HaSで始めたのが、地域のプロデュースや地域再生系の仕事です。例えば地方の空き家をリノベーションする案件ではコンセプトメーキングから携わり、企画から設計、運営までワンストップでできるような体制をつくっています。HaSはパートナーの西村拓也と運営していまして、彼は宿泊事業の企画、オペレーション、コミュニティづくりを得意としています。
――地域の魅力に気づいたきっかけは何ですか?
メキシコはすごく日本から遠いんですね。首都まででも12時間かかるうえ、そこから地方に行くと18~20時間かかります。それでも、毎年行き来していたら、この地球のどこにでも行けるような感じになってきて、国境を感じなくなったんです。「この星に住んでいる」みたいな感覚、スケールになってきました(笑)。そういう視点を持つと、メキシコでも日本でも都市や地方という区分が消えて、「この星にはいろんな魅力がある」と思えるようになり、ローカルを仕事の対象にするのが楽しくなってきたんです。
――これまでの活動を振り返って、原点となる仕事はありますか?
独立前、北海道ニセコのホテル設計の仕事をしていました。ホテルのコンセプトを明確に打ち出し、魅力的な建築・空間をつくればそれが市場価値を持ち、来てくれるお客さんなどに感動・共感してもらえるという経験ができたのは自信になりました。そういう経緯もあり、独立した後も宿泊施設の計画に携わっています。
co-labの魅力
――co-lab墨田亀沢のどこに興味を惹かれましたか?
いろんなクリエイターさんが集まっているところですね。
――日々どういう使い方をしていますか?
自宅だと完全に集中することは難しいので、午前中は家で仕事して午後はここに来たり、あるいは外出する機会があるとき、こっちに来たりしています。業務の中で建材メーカーさんや建設業者さんとやり取りをすることが多いので、打ち合わせにも利用しています。
――入ってみてよかった点は何ですか?
他のメンバーの皆さんと交流できるのは楽しいですね。メキシコの物販もやっているんですが、この間デザイナーの青木さんにメキシコの人形を気に入って頂き購入してもらいました(笑)。
――今後、メンバーさんとどういうコラボレーションをしたいですか?
私は語学が得意なので、英語やスペイン語に関わる案件や、空間に関わるお仕事はお手伝いしやすいのかなと思います。
時間をかけることの大切さ
――co-lab墨田亀沢周辺で好きなところはありますか?
大横河親水公園です。緑が多いですし、あそこは通るだけで気分がいいですね。
――趣味は何ですか?
旅行や語学を勉強するのが好きです。スペイン語は家で日常的に使うんですけど、英語は家族以外の人と話したいので英会話を毎日やっています。これから国内外の案件で外国人のクライアントも増えてくると思いますし。
――最後に。仕事で大事にしていることは何ですか?
検討に時間をかけることです。なるべく多くのパターンを作り、デザイン検討の時間を取っています。あと自分1人でアイデアを練るよりも、他の人とアイデアをミックスしたほうが面白いものが生まれると思っています。メキシコのスタッフとのコラボレーション等、国籍も年齢も違うけど面白いアイデアを提案し合える関係に大きな可能性を感じています。
皆川さんと話すと、自由に生きている人だなという印象をもちます。日本から遠く離れたメキシコと行き来し、メキシコや日本の中でも都市圏というよく知られた場所ではなく、ローカルに新しい価値を見出されています。距離の自由、メジャーな価値観からの自由。そして、忙しく仕事をしているにもかかわらず、潤沢に時間をかけて仲間といっしょにアイデアを練っています。時間の自由、自分のアイデアの固執からの自由。とても皆川さんの真似はできなくても、その自由な精神を見習いたいです。
次回は『株式会社インバース』の芦沢晋作さんにお話を伺います。お楽しみに!