Who’s working? 第13回 合同会社ケインズ 深川信彦さん
co-lab墨田亀沢には様々な活動をされているメンバーさんがいらっしゃいます。
その活動をインタビュー形式でご紹介するシリーズ“Who’s working?”
第13回目は合同会社ケインズの深川信彦さんです。
今回は深川さんに現在のお仕事やco-lab墨田亀沢に入ったきっかけなどについて伺いました。
墨田区を面白がる
――現在のお仕事は何ですか?
教育関連の企画を行う合同会社「ケインズ」の運営です。仕事の一例をあげると、地方から修学旅行で東京に来る中学生・高校生の体験プログラムをカスタマイズしています。
――創業のきっかけは?
ケインズを立ち上げる前、身体を壊して、勤めていた会社で仕事をするのが難しくなりました。それと、前の会社時代に教育関係の仕事で墨田区の案件を担当する機会がちょくちょくあって、面白い地域だなと思っていました。
それまでは全国津々浦々出張してプログラムを練っていましたが、墨田区を中心とした東東京に特化した地域振興をやりたいと思い、ケインズの活動を始めました。
遊びを探求する
――リニューアルされたHPを拝見し、ボードゲームなどのアナログゲームを遊びや教育の一環として開発されているとお見受けしました。ボードゲームに取り組みようになったきっかけは何ですか?
最初は、体調回復と社会復帰に向けたリハビリとして始めました。当時、東日本大震災の影響で地域の良さを見直すような風潮があり、郷土かるたをつくるのが流行っていたので、墨田でも作ろうと思い、有志と制作に着手したのがきっかけです。それからは、仕事というよりボランティアで次々とオリジナルゲームを作るようになりました。
――なるほど。では、始めて気づいたアナログゲームの良さは何ですか?
アナログゲームは対面でやるからコミュニケーションが弾みやすく、機器やデジタルな環境がなくてもすぐできます。また、子どもから大人まで簡単に取り組めるのも良いですね。
また、墨田区は地域の産業として印刷製本業がとても盛んですが、印刷には多くのノウハウや技術の蓄積があって、それらを活用することで、アナログでも新しいのものが作れると分かりました。
――遊ぶだけじゃなく、ゲームをつくることも紹介されています。つくることの意義は何でしょうか?
自分はデジタルのゲームがなかった時代に育ちました。そのころのように、与えて遊んでもらうだけでなく、自分で工夫したり、自分で遊びやすいようにしたり、ないものをつくってしまおうとしたりする楽しみを共有したいと思っています。
もう1つの理由としては、近年アクティブラーニングや探求型自発的な学習――自分で考えて失敗を繰り返しながら、物事をすすめること――が推奨されているので、そういう意味でもアナログゲームの可能性はあるのではないかと思っています。
――今まで子どもたちとつくったアナログゲームで印象に残ったものはありますか?
1つはすみだのトリビアとかストーリーとかモノポリーとかとひっかけて、「スミトリー」という名前のカスタマイズしやすいゲームをつくりました。スミトリーはデザインから印刷・加工まで、全て墨田で制作したので、地域の人をはじめとして多くの人に「ものつくりの街墨田」を知ってもらいたいです。
もう1つは北斎美術館がまだ建つ前に、葛飾北斎に注目が集まっていたので、北斎に関するすごろくを作りました。
co-lab墨田亀沢はコラボレーションが進む
――co-lab墨田亀沢に入ってみてよかった点はなんですか?
自分にとってはすごくいいことしかないですね。co-lab墨田亀沢にいると区の人に言うと、「あそこにいるんだ」と信頼性が高まるのも感じます。あと、「こういうことやりたいんだけど」とクリエイターの方や代表の有薗さんに相談できる環境があるのがいいなと思います。
――今までどんなコラボレーションがありましたか?
すごろくはデザイナーの八島さん、ホームページの改訂はライターの草野さんといっしょに仕事しました。最近は豚革の製品をつくっている児嶋さんの活動をもっと知らしめたいと思い、修学旅行で墨田に来てくれる子どもたちに児嶋さんが仕事をプレゼンしてもらう企画を進めています。
――それでは、co-lab墨田亀沢をどんな人に勧めたいですか?
墨田や東東京でなにかやりたいと考えている人ですね。まずここに来て、何をしているのかアピールすると誰かしらにつながると思いますよ。
ドラえもんの原っぱのように
――墨田区で好きなお店はありますか?
スカイツリーのイーストタウンの12階にエクセルシオールカフェがあって、眺めがいいのでハマってます。リーズナブルで居心地いいしWi-Fiもつながるし、co-labに来たときなどに寄りますね。
――最後になりますが、これからしたいことはなんですか?
我々の世代から見ると、今の子どもは恵まれてはいるけど、いろいろと制約も多いなと思います。だからこそ、できるだけ制約のないような時間とか環境がどっかにあったらいいんじゃないかなと思うので、ドラえもんの原っぱみたいな場所をつくりたいと思います。
あと、コロナで経営は転機をむかえ、会社はダメージを受けました。そのダメージをダメージのまま残さないように、この数年間に試行錯誤したことを生かして……しっかりお金を稼ぎたいです(笑)。
大人になるにつれ、遊びは趣味や好きなスポーツに名前を変え、なにか新しい遊びを発明するような心意気は失われがちだと思います。それでも大人が思い切り遊ぼうとするとき、その姿が子どもに少し似るのは、やはり遊びが子どものものだからでしょうか。遊びという大きな概念は子どもがもつ可能性の大きさと呼応して、大人の手にあまるのかもしれません。
次回は水落祥さんにお話を伺います。お楽しみに!